FC2ブログ

五人組帳

五人組帳の第四段です。

五人組帳の手彫り印鑑

今回は開運印鑑を探している方には興味深い記事になると思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この記事を初めて見てくれた人には関係ありませんが、一旦上の部分でストップしていました。


忙しかった事もありますが、体調もすぐれずに更新が疎かになってしまっていました。

また、「開運印鑑を探している方には・・・」と書いた通り、八方崩しについて

会話調のたとえ話を作って説明しようとしたところ、なかなか話が作れずに更新が後回しになって

おりました。

会話調は諦めました。

前置きはこの辺にして五人組帳の続きです。

五人組帳の手彫り印鑑

右から組頭 源右衛門さん  伊三郎さん  次三郎さん  儀兵衛さん  佐兵衛さん

組頭・源右衛門さんの印は八方崩しですね。

左端(〆五人・源右衛門さんの印を除く)佐兵衛さんの印は左右に十分空間をとったバランスのいい字配りです。



二段目

五人組帳の手彫り印鑑


右から組頭:武兵衛さん  嘉吉さん  美兵衛さん  …判読不能 ●七さん  源四郎さん

武兵衛さんは太枠細字の八方崩しです。

他の印鑑に比べ丁寧に彫られているのがわかりますね。

またその隣、嘉吉さんの印鑑は、左右に唐草が彫られています。


今回開運印鑑について説明をしようと思ったのは、八方崩しが二つ出てくるからです。

五人組帳の手彫り印鑑

細輪細字です。

丁寧に彫られていますが、何と彫られているか判読できませんね。

開運印鑑販売店さん(別名 印相屋さん)曰く八方篆書体です。

まあ、しつこいほど「八方篆書体などという篆書体はありません」と過去に書いてきましたが

その通りです。

これは書体という部類ではなく、篆書体を読めなくするよう四方八方に崩したもので

八方崩しと呼ばれ、あくまでも篆書体の変形です。

書の美の観点から考えますと、評価できない崩しです。

3行上に書きました「読めなくする」というのが重要です。

もう一つの八方崩しを

五人組帳の手彫り印鑑

太枠細字の八方崩しで、こちらも他の印鑑と比べて丁寧に彫られているのがわかりますね。

前述した会話調とは

この五人組帳には当時の人々の名前が出てきますが、昔の人達を登場人物にして

悪人が印鑑を拾ったところから始まり、悪人はその印鑑を使って所有者の田畑を売ってしまおうと

考えたが、(当時は識字率が悪かったので)印文を読めずに苦労するという話。

何とか文字を読める人を探すものの、篆書体の八方崩しは彫った印判師しかわからず、

結局思うようにはいかなかった という話です。


印鑑を落とした人は、この五人組帳で八方崩しの印を使用していた源右衛門さんか武兵衛さんにするものの

拾った悪人は誰にするか。

また、当時は各自で保管していなかったはずだから「落とす」というのはおかしいか。

臨場感を出す為の背景はどうするか などいろいろ考えてしまって結局話は作れませんでした。

お粗末な内容になってしまいましたが、八方崩しを説明する上では会話調の有無は大した問題では

ありません。

ここからが本題ですが、開運印鑑の謳い文句ではよく「印相体(八方篆書体)は偽造がされにくい」など

大きく間違った事が平気で書かれているので、その誤りを説明する事が今回の目的です。

「印相体は偽造がされにくい」など、書いてある事を鵜呑みにしてしまう方って意外と多いんです。

お客様からもそのような相談があります。

しかし、その理由はどこかに書かれているでしょうか。

仮にどこかのサイトで書かれていたとしても狙い撃ちではありませんので、インチキサイトの方は

怒らないで下さい。

印相体(印相屋さん曰く八方篆書体)が偽造されにくい?

そんなおかしな事はある訳ありません。

しかし、印相屋さんが最初に真似をしたとされる本物の篆書体八方崩しは偽造を防止する為の

文字なのです。

「???」

まあ普通なら混乱して意味が伝わらないでしょう。

では改めて本物の八方崩しについて書きますが、印鑑は偽造されてしまってはいけない物です。

仮に伊藤さんという人の印鑑を偽造するのに、渡辺という印鑑を彫る人は居ませんよね。

伊藤さんの印鑑を偽造するのであれば、当たり前ですが伊藤という印文で彫ります。

その勝手に彫ったニセ「伊藤」の印鑑を使って署名捺印して悪用するものです。

昔は印鑑帳という今で言う印鑑登録制度がありましたので、そうそう悪用できるものではありませんが

上に書いたように印鑑そのものを落としてしまった場合を考えてみて下さい。

印鑑を落としてしまっても、何と彫られているかわからなかったら誰の印鑑かわからず悪用できませんよね。

八方崩しは篆書体を四方八方に崩し部首は変形されてしまったものの、彫った印判師以外はどの線がどの部首

であるかはわからない という文字なのです。

では、印鑑を落としてしまった時の悪用防止の為だけに作られた物なのでしょうか。

いいえ そんな事はありません。

重要なのは、篆書体を読めないように崩す事なのです。

偽造されて困るのは個人の印鑑だけではありません。

流通しているお札も偽造されてしまっては大変な事になってしまいます。

そこで 「何て書いてあるか読めない」 八方崩しが多用されたのです。

<江戸時代のお札=藩札に関して>

八方崩しだけではありません。

九畳篆も読みづらい為に多用されました。

また、例え器用な人でも容易に彫れないよう、細密な彫刻(絵柄模様)がされたものです。

文字と細密な絵柄の彫刻が、後の明治時代に印章文化が頂点に花咲く事になるのですが、今回は偽造の

観点からですので、明治印判師の印章文化については改めてとさせていただきます。

さて、ここで疑問が湧く方も居ると思います。

何て書いてあるか読みづらい事が偽造防止になるのだろうか。

という疑問です。

目的は、前述した伊藤さんと渡辺さんの印鑑の話に近い事なのですが、藩札には沢山の言葉や文字が

書かれているものが多くあります。

楷書体や行書体もありますが、篆書体が最も多いです。

中にはハングル文字やアラビア数字、中にはローマ字も彫られているのがありました。

どうして藩札にローマ字などが彫られていたのかというのは、篆書体を八方崩しにしたのか

と同じ事です。

理由は、当時の庶民はローマ字やアラビア数字を知らなかったからです。

読めなければ偽造は困難だろうという事です。

しかし、藩札に偽造が横行したのは歴史的事実として有名です。

そうです。

例え何て書いてあるか読めなくても、同じように彫ってしまえば偽造できてしまうからです。

藩札の防贋(偽物防止)としては、紙を特殊な紙にしたり、布や糸くずを紙に混ぜたり、隠し文字を

入れたりしたものがありました。

紙幣の隠し文字は今のお札にもありますね。

その他、梵字や神代文字が使われたものもありました。

全ては偽札防止の為です。

篆書体の八方崩しも、アラビア数字やローマ字を印刷した事と同じ理由です。

説明が長くなりましたが、読めなければ偽造はできないだろう という理由なのです。

藩札については、文献がいろいろ出ておりますので図書館などで調べていただければおわかり

いただけるかと思います。

別に印相体(八方篆書体?)に特別な効力があって偽造できにくいという奇妙な理由がある訳では

ないのです。

そん神通力みたいな事なんかありません。

スキャナーで読み込んだ印影を機械で彫る事を除き、本当に手彫りしたと考え、印相体(八方篆書体)

とその他の書体を比べて、どの書体が偽造しにくいか。

技術者の答えは賛否両論あると思いますが、偽造が容易な書体は印相体だと思います。

印相屋さん曰く、印相体は細字ではいけないようですので、全て太字です。

そし文字がグニャグニャしているだけで太細のないゴシック体です。

これはグニャグニャしている点を除けば印章技術講習会の初心者が最初に彫刻を教わるものと同じです。

得手不得手がありますので一概には言えませんが、きちんとした楷書体、行書体、草書体なんかは

印相体と比べて偽造しづらいのではないでしょうか。

その根拠を書かなければいけませんね。

理由は3つあります。

印相体は基本的に太細がありません。

それに比べ、行書体、草書体は太い部分と細い部分があります。

その強弱①と、滑らかな曲線②、「きちんとした」という点③ の三つです。


① 筆で書く場合は強弱を付けるのが容易ですが、彫刻で強弱を付けるのは初心者には難しい作業です。


② 滑らかな曲線も①と同じ理由ですが、滑らかな曲線は印相体にもあります。
   
  しかし、②は③の「きちんとした」という事にも関係あります。

  (①②のいずれも③に関係します)

  「曲線」という言葉は同じでも、きちんとしたものと、そうでない物は難易度が違います。


③ 当たり前のような言葉ですが「きちんとした」という事が重要です。

  きちんとしていなければ、目立つ部分以外はいい加減に彫られていても目立たないものです。

  しかし、きちんとしたものであればいい加減に彫られていても目立ってしまいます。

  上に理由は3つと書きましたが、付け加えますともう一つの大きな理由があります。

  印相体(篆書体も同様ですが)は一般には見慣れない書体のはずです。

  日常生活で目にする機会が少ない書体ですよね。

  それに比べ楷書体、行書体、草書体は比較的目にする機会が多いはずです。

  草書体はそれ程でもないかも知れませんが、印相体よりは日本人に馴染んでいる文字だと思います。

  見慣れた書体である楷書体であれば、ちょっとの違いで本物と偽物の区別はつくはずです。

  しかし、見慣れない書体 しかも篆書体よりもゴチャゴチャしている印相体では、細部までは

  よく見ないと違いがわかりづらいはずです。

  極端な表現をしますと、アラビア語(文字)やタイ語(文字)を偽装したものと、日本人に馴染んでいる

  楷書体の偽造を見分けるのはどちらが難しいか。

  そう考えて見て下さい。


まあ、これらは偽造を前提に考えた事ですので印章彫刻としては邪道であり、技量のある職人が丁寧に

偽装すればどの書体でも同じような物が彫れてしまいますので、彫刻初心者向きの考え方に過ぎません。



繰り返しますが、印相体は偽造が困難などという事は根拠のないデタラメに過ぎません。




ブログ編集者 はんこの印善
プロフィール

Author:三代目印章店主
古い手彫り印鑑の印影資料を中心に印相体撲滅に向けてマイペースで記事を書きます。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR