九畳篆
今回は久しぶりに九畳篆の印影を紹介させていただきます。
明治8年の書類より。

土地関係の連判状です。

和紙に筆書きされており、印影は全て黒印です。

印影からの推測ですが、これは黒肉が使用されたのではなく、墨を印章に付けて押印されたものと
思われます。
この頃の黒印はそういう使用が多くありました。
中央の印影と違い、(上の写真)左側の印影は不鮮明ですが左右に縦線があるのをおわかりでしょうか。
これは何だと思いますか?
文字ではなく唐草模様です。
このタイプもこの頃は非常に多かったのですが、唐草を角ばらせた模様にして文字の左右に入れてあります。

これは中輪細字(太枠細字)で文字を大きく配分したタイプです。
文字の一部が枠で隠れますが、きちんとした書法です。

これは二重枠の小判型印鑑ですね。

こちらも小判型印鑑です。

最後に九畳篆です。 (写真中央)

「一、二、三、四・・・ あれ? 九畳篆じゃないけど…」と思われる方も居ると思います。
七畳篆、八畳篆という論もありますが、基本的に折り畳みの多い畳篆は全て九畳篆と呼ばれます。
ですので、折り畳みが十本以上ある畳篆でも九畳篆と言い、十二畳篆などという呼ばれ方はありません。
これは以前も書きましたね。
判読の可否について(これもどこかで書いた気がしますが・・・)
中国の官印から生まれた究極の印篆・九畳篆ですが、判読に難があるのと、どれも似たように見えてしまう
事で文字や印章の分野で評価が低い事は否めない事実です。
しかし、それでも私は好きですね。
昔の人が創意工夫して折り畳んだ究極の印篆。
アップの印影も素敵ですが、上の画像のように少し離れて見ると太枠の重厚感がわかります。
そう 印は文字のみの太さではなく、印影全体のバランスで考えるものです。
字が細い=貧弱と考えるのではなく、全体のバランスで考えてみて下さい。

明治8年の書類より。

土地関係の連判状です。

和紙に筆書きされており、印影は全て黒印です。

印影からの推測ですが、これは黒肉が使用されたのではなく、墨を印章に付けて押印されたものと
思われます。
この頃の黒印はそういう使用が多くありました。
中央の印影と違い、(上の写真)左側の印影は不鮮明ですが左右に縦線があるのをおわかりでしょうか。
これは何だと思いますか?
文字ではなく唐草模様です。
このタイプもこの頃は非常に多かったのですが、唐草を角ばらせた模様にして文字の左右に入れてあります。

これは中輪細字(太枠細字)で文字を大きく配分したタイプです。
文字の一部が枠で隠れますが、きちんとした書法です。

これは二重枠の小判型印鑑ですね。

こちらも小判型印鑑です。

最後に九畳篆です。 (写真中央)

「一、二、三、四・・・ あれ? 九畳篆じゃないけど…」と思われる方も居ると思います。
七畳篆、八畳篆という論もありますが、基本的に折り畳みの多い畳篆は全て九畳篆と呼ばれます。
ですので、折り畳みが十本以上ある畳篆でも九畳篆と言い、十二畳篆などという呼ばれ方はありません。
これは以前も書きましたね。
判読の可否について(これもどこかで書いた気がしますが・・・)
中国の官印から生まれた究極の印篆・九畳篆ですが、判読に難があるのと、どれも似たように見えてしまう
事で文字や印章の分野で評価が低い事は否めない事実です。
しかし、それでも私は好きですね。
昔の人が創意工夫して折り畳んだ究極の印篆。
アップの印影も素敵ですが、上の画像のように少し離れて見ると太枠の重厚感がわかります。
そう 印は文字のみの太さではなく、印影全体のバランスで考えるものです。
字が細い=貧弱と考えるのではなく、全体のバランスで考えてみて下さい。

長澤物産手形
手彫りゴム印
今回は手彫りゴム印を
文字以外のゴム部分に波模様状の跡がご覧いただけるかと思います。
手彫りゴム印から型をとった祝儀袋用の既成ゴム印をお持ちの型は見た事があるのではないでしょうか。
昔は小切手用のゴム印他、商店用のゴム印としてごく一般的でした。

手彫り印鑑(木口:普通の印鑑)は機械彫りの物より当然早く登場しましたが、ゴム印に関しては
機械彫りに相当する鋳造ゴム印の方が手彫りゴム印より早く登場していたのはご存知でしょうか。
詳細につきましては改めて紹介させていただきますが、これは結構知られていない事だと思います。

久しぶりに宣伝で恐縮です。
手彫りゴム印小切手用(2行)
手彫りゴム印手形用 (3行)
明治時代の印譜より
仲の良い同業者さんから「ブログのネタ切れですか?」などと揶揄されている昨今ですが
ここのところ更新する時間がなかっただけです。
私としては趣味的に一日一印影づつ画像を紹介していく様なブログを目指したいのですが、
どうも時間の関係で思う様に実行できておりません。
まだまだ先の予定ですが、隠居するまでに全ての資料を公開できればという事を目標にしておりますが
このペースでは孫の代まで掛かってしまいそうです。
前置きはこの位にして明治時代の実務印 印譜から

「一日一印影」でコツコツ続けたいのですが、暫く更新ができていなかったので今回はまとめて紹介
させていただきます。

明治時代の情緒豊かな印影をどうぞご覧下さい。
このような印鑑は今ではほとんど全てゴム印で作られていると思いますが、これはゴム印ではありません。

印影だけでなく、印文も実に情緒豊かなものだと思いませんか。

今回はどんどん紹介させていただきます。





文字スペースの配分ですが、均等ではなく文字の形によってスペースの配分が異なっているのは
おわかりいただけるでしょうか。↓




今一般的に商店や会社で使われている印鑑とは大きさが随分違う(昔の方がはるかに大きい)のが
おわかりいただけるかと思います。

ここのところ更新する時間がなかっただけです。
私としては趣味的に一日一印影づつ画像を紹介していく様なブログを目指したいのですが、
どうも時間の関係で思う様に実行できておりません。
まだまだ先の予定ですが、隠居するまでに全ての資料を公開できればという事を目標にしておりますが
このペースでは孫の代まで掛かってしまいそうです。
前置きはこの位にして明治時代の実務印 印譜から

「一日一印影」でコツコツ続けたいのですが、暫く更新ができていなかったので今回はまとめて紹介
させていただきます。

明治時代の情緒豊かな印影をどうぞご覧下さい。
このような印鑑は今ではほとんど全てゴム印で作られていると思いますが、これはゴム印ではありません。

印影だけでなく、印文も実に情緒豊かなものだと思いませんか。

今回はどんどん紹介させていただきます。





文字スペースの配分ですが、均等ではなく文字の形によってスペースの配分が異なっているのは
おわかりいただけるでしょうか。↓




今一般的に商店や会社で使われている印鑑とは大きさが随分違う(昔の方がはるかに大きい)のが
おわかりいただけるかと思います。

感謝の意 (+藩札の紹介)
今回は指向をを変えてお客様への感謝の記事とさせていただきます。
全てのお客様は有り難いものですが、お客様との交流は個人情報ですので基本的にブログ上では
公開しないようにしております。
また、自作自演のコメントのように見えてしまうかも知れませんので控えておりました。
でも、今回は例外的に感謝の意を記事にしてみました。
メールをいただける方の中ににはお客様以外の方も多く居ます。
そのような方も含め全ての方をここにピックアップできませんが、いくつかのお礼を兼ねて
その前に本日の画像を紹介させていただきます。

保存状態がよくないので「多分」という事にさせていただきたいのですが、江戸芝増上寺の寺社札です。
この画像を見てピンときたお客様は居るはずです。
他の印影は後回しにし、お客様(以外も含みます)への感謝。
悪徳印相屋さんの情報を手紙でくれた方、藩札コレクターさんからの貴重な画像付きメール。
ブログの写真を見てご注文をいただいたご近所の方。
大作とはいえお時間が掛かってしまい申し訳ございませんでした。
同じくブログの写真を見て遠方からご来店いただいた方。
ブログの更新を促していただき有難うございます。
好きな古い印影のタイプが私と似ている為に、ご注文品をお渡しさせていただく時に長居をさせてしまった方。
昔の印譜を見ながらお話させていただいたので、つい時間を忘れてしまい失礼しました。
貴重なヒントを教えていただけた事にこの場を借りてお礼を申し上げます。
さあ
今回は江戸時代の藩札(寺社札)からです。
上の写真の裏面です。

江戸時代の朱肉は幕府の朱座により管理されていたので一般庶民はもとより、やたらと朱は使えなかった
のでこれは貴重な江戸時代の印影です。 (注)藩札自体には朱の印影は珍しくありません。

大部分の藩札にはこうした吉祥画があります。

江戸から明治までよくあった分銅型の印影です。
印影がよく見えませんがこれも本物の八方崩しです。
もちろん印相体なんかではありません。
開運印鑑では「いけない」とされてしまっている太枠細字である事にも注目して下さい。
いつもならここで印相屋さんの辛口批判になってしまうところですが、今回はお客様への感謝の意
もありますので、控えておきましょう。

銀壱匁という文字の中央右寄りに掛かって押されている印影も本物の八方崩しです。
全体的に黄色っぽく写ってしまいましたが、印影は緑肉で押されたものです。
文字を見れば藩札と印判師は密接な関係があった面影がうかがえますよう彫られている篆書体は
紛れも無く印篆です。(↑)

これは押印ではなく摺られた印影ですが、本物の「太枠細字」の八方崩しです。(↑)

迫力のある小判型の本物八方崩しです。

南都御貸附所です。
全てのお客様は有り難いものですが、お客様との交流は個人情報ですので基本的にブログ上では
公開しないようにしております。
また、自作自演のコメントのように見えてしまうかも知れませんので控えておりました。
でも、今回は例外的に感謝の意を記事にしてみました。
メールをいただける方の中ににはお客様以外の方も多く居ます。
そのような方も含め全ての方をここにピックアップできませんが、いくつかのお礼を兼ねて
その前に本日の画像を紹介させていただきます。

保存状態がよくないので「多分」という事にさせていただきたいのですが、江戸芝増上寺の寺社札です。
この画像を見てピンときたお客様は居るはずです。
他の印影は後回しにし、お客様(以外も含みます)への感謝。
悪徳印相屋さんの情報を手紙でくれた方、藩札コレクターさんからの貴重な画像付きメール。
ブログの写真を見てご注文をいただいたご近所の方。
大作とはいえお時間が掛かってしまい申し訳ございませんでした。
同じくブログの写真を見て遠方からご来店いただいた方。
ブログの更新を促していただき有難うございます。
好きな古い印影のタイプが私と似ている為に、ご注文品をお渡しさせていただく時に長居をさせてしまった方。
昔の印譜を見ながらお話させていただいたので、つい時間を忘れてしまい失礼しました。
貴重なヒントを教えていただけた事にこの場を借りてお礼を申し上げます。
さあ
今回は江戸時代の藩札(寺社札)からです。
上の写真の裏面です。

江戸時代の朱肉は幕府の朱座により管理されていたので一般庶民はもとより、やたらと朱は使えなかった
のでこれは貴重な江戸時代の印影です。 (注)藩札自体には朱の印影は珍しくありません。

大部分の藩札にはこうした吉祥画があります。

江戸から明治までよくあった分銅型の印影です。
印影がよく見えませんがこれも本物の八方崩しです。
もちろん印相体なんかではありません。
開運印鑑では「いけない」とされてしまっている太枠細字である事にも注目して下さい。
いつもならここで印相屋さんの辛口批判になってしまうところですが、今回はお客様への感謝の意
もありますので、控えておきましょう。

銀壱匁という文字の中央右寄りに掛かって押されている印影も本物の八方崩しです。
全体的に黄色っぽく写ってしまいましたが、印影は緑肉で押されたものです。
文字を見れば藩札と印判師は密接な関係があった面影がうかがえますよう彫られている篆書体は
紛れも無く印篆です。(↑)

これは押印ではなく摺られた印影ですが、本物の「太枠細字」の八方崩しです。(↑)

迫力のある小判型の本物八方崩しです。

南都御貸附所です。
大正時代の手彫りゴム印
私はブログ内で「古き良き時代」とか「情緒」という言葉をよく使っていますが
安易に使い過ぎでは?と思われてしまっているかも知れません。
語彙の少なさでしょうか。
そんな心配がありますが、今回も古き良き時代の情緒あふれるゴム印の印影です。

大正時代の手彫りゴム印です。
これは技術競技会の作品ではありません。
実際に使われていたものです。
蛇の目傘に下駄 瓢箪も見えます。
こんな絵柄の手彫りゴム印を見たら、ありきたりの言葉であろうとつい「古き良き時代」と言って
しまいます。

「自作製品ハ責任付販売」
カタカナが使われているところなんかは大正時代の情緒あふれる感じだと思いませんか。

ちょっと暗く写ってしまいましたが、草書体の文字が美しいです。
手彫りゴム印で草書体のような文字を彫る場合は印刀の切れがよくなければ美しさが出ません。


安易に使い過ぎでは?と思われてしまっているかも知れません。
語彙の少なさでしょうか。
そんな心配がありますが、今回も古き良き時代の情緒あふれるゴム印の印影です。

大正時代の手彫りゴム印です。
これは技術競技会の作品ではありません。
実際に使われていたものです。
蛇の目傘に下駄 瓢箪も見えます。
こんな絵柄の手彫りゴム印を見たら、ありきたりの言葉であろうとつい「古き良き時代」と言って
しまいます。

「自作製品ハ責任付販売」
カタカナが使われているところなんかは大正時代の情緒あふれる感じだと思いませんか。

ちょっと暗く写ってしまいましたが、草書体の文字が美しいです。
手彫りゴム印で草書体のような文字を彫る場合は印刀の切れがよくなければ美しさが出ません。


回り文字(回文)
印篆
秦の時代に始皇帝が李斯に命じて篆書体を統一し公文書に篆書体が使われるようになりましたが、
篆書体は書く際に煩雑さが問題となりやがて隷書体へと変貌を遂げます。
しかし、印章に用いられる文字として篆書体は存続していきました。
広義で言えば印章に用いられる篆書体は全て印篆という事になりますが、実際の印篆は角ばり、
印面の隙間を少なくする為に折り畳み多くした形が次々登場してきます。
堅苦しい説明はこの位にして、今回も明治時代の実務印譜より。

今回は右上の印影をピックアップしてみます。
情緒あふれる印影ですが、下段中央の篆書体はまさしく印篆です。

必要以上にというと語弊がありますが、言葉を伝達する手段としてのみの文字ならば必要のない
折り畳みがされているのが印篆の特徴です。
篆書体を扱う字典にも印篆は多く載っていますが、それらはほぼ全て落款印から引用されたものです。
落款印ももちろん印章ですが、実務印とは使われ方、種別が明らかに異なります。
それについてはいずれ紹介していきたいですが、今は評価が低い「角ばった印篆」
私は大好きです。

アップもいいですが、少し離して見ると印影全体の美しさがより良くわかります。
篆書体は書く際に煩雑さが問題となりやがて隷書体へと変貌を遂げます。
しかし、印章に用いられる文字として篆書体は存続していきました。
広義で言えば印章に用いられる篆書体は全て印篆という事になりますが、実際の印篆は角ばり、
印面の隙間を少なくする為に折り畳み多くした形が次々登場してきます。
堅苦しい説明はこの位にして、今回も明治時代の実務印譜より。

今回は右上の印影をピックアップしてみます。
情緒あふれる印影ですが、下段中央の篆書体はまさしく印篆です。

必要以上にというと語弊がありますが、言葉を伝達する手段としてのみの文字ならば必要のない
折り畳みがされているのが印篆の特徴です。
篆書体を扱う字典にも印篆は多く載っていますが、それらはほぼ全て落款印から引用されたものです。
落款印ももちろん印章ですが、実務印とは使われ方、種別が明らかに異なります。
それについてはいずれ紹介していきたいですが、今は評価が低い「角ばった印篆」
私は大好きです。

アップもいいですが、少し離して見ると印影全体の美しさがより良くわかります。